「レンジでチン!」の不可解
前編では、電子レンジ(以下レンジという)の加熱設定が不合理な仕様になっていることを述べました。
(前編へのリンクはこの記事の最後にあります)
この不合理な仕様は、
業界規格が統一されていない
ということに起因しています。
本稿は、二つの業界規格を統一して、レンジの不合理な仕様の改善を提言するものです。
二つの業界とは…
1️⃣調理にレンジを用いる食品業界
2️⃣レンジを製造している家電業界
以下それぞれの業界仕様について考察しました。
食品業界の仕様
【現状】
近くのスーパーで、レトルト食品などのレンジで調理する商品の加熱条件の表示を調べてみました。
その結果は以下のとおりです。
レンジの出力W数と加熱時間の表示に統一性がありません。
前編で紹介したお餅の加熱条件です。
500Wの一択です。
一方、ナンの加熱条件は600Wを基準にしています。
レトルトカレーは、500、600、700Wの3種の出力から選択できます。
このように、出力Wの大きさがバラバラで、選択できる出力Wも一択のものから複数の出力Wが選択できるものまで様々です。
また、現在流通している標準的なレンジの最高出力である800Wや1000Wでの加熱時間は表示されていません。
短時間で加熱できるモードを利用できないのは効率的ではありません。
高出力で調理すると温度ムラが生じるという指摘もありますが、業務用のレンジでの最高出力は1500W以上のものが主力です。
【改善後】
前編のお餅の加熱条件はこのように書かれていました。
これを次のように変更します。
加熱条件を出力W(ワット)と時間で表していたものをお餅に与えるべき熱量(エネルギー)として表示します。単位はJ(ジュール)です。
必要熱量(J)が一定で、出力Wが決まれば、加熱時間は自動的に決定します。
例えば…
60000J=500W×120秒=600W×100秒=800W× 75秒
こんな計算はレンジがします。
これなら、出力Wの大きさに拘らず、加熱条件を一意的に示すことができます。そして、この表示を「食品表示法」で義務付けます。
※ ワット(W)とは、1秒間毎に発生・消費するエネルギーの大きさで、意味は[J/s](ジュール/秒)。1Jは、1N(ニュートン)の力で物体を1m動かすときの仕事に相当するエネルギー。なので、電子レンジで500Wで2分(120秒)加熱すると、60000J(500W×120秒)のエネルギーを与えることになります。
従来の表記(出力と時間)を併記したのは…
「急にそんなこと言われても…」と戸惑うユーザーを救済するためです。そのため、食品表示法に以下の一項を加えます。
「食品表示法・電子レンジで調理する食品に関する時限法令」〜但し、移行期間として今後3年間は、500W(殆どの機種に具備されている出力)の加熱時間を併記すること。
家電業界の仕様
食品業界の加熱条件の表示がJ(ジュール)という熱量に変更されたなら、次はレンジの加熱設定の規格統一です。
【現状】
前編で使用したレンジは、食品に表示されたW(ワット)数にレンジの出力を切り替え、更に指定された加熱時間を操作パネルから打ち込んでスタートボタンを押すという操作が必要でした。
初期値が最高出力の800Wになっていますが食品にこの出力が示されていることは殆どありません。
【改善後】
新型レンジの具体例を示します。
レンジの出力は、200W、 500W 、800Wの3種の出力を備えています。
初項200で項差300の等差数列で美しい😍
この3種の出力のうち200Wは解凍や煮物を調理するときに発動される出力です。通常使用では500Wと800Wの2種の出力しか使いません。
しかし、ユーザーはこの出力W数を意識することはありません。食品に表示された熱量(J)を指定するだけで基本設定は完了します。必要に応じて、後述するオプションの「じんわり」モードを追加します。
通常の温め加熱では、ユーザーは食品に表示された熱量J(ジュール)の数値を操作パネルから打ち込むだけです。
500W×2秒が1000Jの熱量に相当するので、入力J(ジュール)の精度は1000J単位で十分です。
以上の改良を加えることで操作パネルは下図のように変貌します。
【現行操作パネル】
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【改良操作パネル】
▶︎高級機種は下段の3つのボタンに代えてテンキーで入力します。
▶︎「さくっと」モードでは自動的に最高出力(このレンジの場合800W)で加熱されます。「じんわり」モードを指定した時だけ出力が500Wになります。
▶︎「さくっと」モードがデフォルトモードなので、熱量(ジュール)だけを指定してスタートすれば自動的に「さくっと」モードで加熱されます。「さくっと」モードのボタンは「じんわり」モードからの変更時に使用します。
▶︎加熱をスタートするとレンジは、指定された熱量(J)と出力モードから加熱時間を計算します。このプロセスはレンジ内部で自動計算されユーザーは何もすることはありません。
そして、レンジが計算した加熱時間が液晶画面でカウントダウンされていきます。
▶︎因みに200Wの存在意義について付言します。
ユーザーが解凍ボタンを押した時、レンジは秤を兼ねたレンジ皿で食品の重量を測定します。そして、測定された重量の70%を水分として200Wの時の通常加熱時間を決定します。全解凍と半解凍に必要な熱量は、通常加熱の何%になるかをあらかじめデータ取りしておきます。その係数を乗じて全解凍と半解凍の時間を算出します。これもレンジが自動で計算します。
以上の改革により電子レンジの操作性は大幅に改善できます。
更なる進化を求めて…
レンジの操作パネルにタッチすると、レンジがしゃべります。
「食品のバーコードをレンジのリーダーで読み込んでください」
バーコードを読み込むと、
「食品をレンジに入れて、扉を閉めてスタートボタンを押してください」
食品業界と家電業界がタイアップして、こんなレンジが発売されたら即、購入します。
ツインバードさんあたりが開発してくれないかなぁ。
10万円までは出すぞ!
※ツインバード: 結構ユニークな製品(地対空ミサイルの様に焼けたパンが爆速で飛び出すトースターなど)を販売している新潟県の家電メーカー。
▼前編はこちらから
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レンジで珍【前編】 〜電子レンジ珍仕様の由来は原始レンジだった! - こに〜 の ざれごと