みなと君の憂鬱
千葉みなと君(仮名)は引っ込み思案でちょっと気弱な高校一年生の男の子です。
みなと君は、コロナ禍の影響もあって、若い女性と喋る機会が殆どありません。この一週間で女性と言葉を交わしたのはコンビニの店員さんくらいです。
👦🏻あっ、レジ袋はいいです。PayPayでお願いします。
👩🏻レシートはいいですか?
👦🏻いいっす。
👩🏻ありがとうございました。
そんなみなと君は、毎年2月14日のバレンタインデーが近づくと遣る瀬無い気持ちに襲われます。
みなと君にとってバレンタインデーは、男子の値打ちが査定される審判の日なのです。
近年、パワハラ、セクハラ、モラハラといったハラストメントに対し人権擁護が叫ばれるようになりました。
この基準でいえばバレンタインデーの仕組みは、気弱な男子に対する立派なハラストメントになるかも。
それに誰からもチョコを貰えない小学生がいたらちょっと可哀想です。
まさにチョコハラですね。
男性としては、チョコがもらえたとしても、バレンタインデーの儀式は、女性がチョコの品等を通じて男性を区別するという構造になっています。
女性が、男性に対する「本気度」を告白する儀式ともいえます。
そこで、女性の本気度の指標となるチョコのランキングを作成してみました。
(チョコにメッセージが添えられていた場合は、本気度が20%くらい上昇することがあります)
チョコ別本気度ランキング
▶︎第6位
法人の営業促進用粗品〜本気度2%(メッセージ付きも2%)
生命保険勧誘のおばちゃんや飲み屋の女性から貰うチョコです。営業促進として交際費に計上される贈答品としてのチョコです。
そして、このチョコ購入の経費は保険契約料や飲み代の価格に原価として既に上乗せされています。
銀座で飲んだ退店時、タクシーに乗り込む直前に見送りのホステスが手渡す紙袋に入った『銀座ウエスト三越店』のリーフパイのようなモノです。
特定の個人ではなくお店からのお土産なのでホワイトデーのお返しは無用です。
▶︎第5位
安っぽいチョコ〜本気度10%(メッセージ付き30%)
1グラム当たり2円以下のチョコがこのグレードに該当します。
箱買いされるチョコです。
1グラム当たり1.57円(税込)
銃弾爆撃のようにバラ撒くのだろうか?
▶︎第4位
高級チョコ〜本気度40%(メッセージ付き60%)
5〜20個のチョコがオシャレな小箱に入ってラッピングされています。価格は1000円から2000円。
上の写真左下のチョコ、「アートショコラギャラリーリアン」です。
リーガロイヤルホテルのチョコ。
内容量は45グラム(5個)、価格は1080円(税込)。1グラム当たり単価は24円です。安価なチョコの約15倍の単価です。
1000〜2000円出費する女性のダメージの度合いによって本気度は変動します。ダメージが大きいほど本気度は高くなります。女性のエンゲル係数(貧困度)が10%上昇すると本気度は5%加算されます。
▶︎第3位
高級ブランドチョコ〜本気度55%(メッセージ付き70%)
スーパーでは販売していない、主に海外ブランドのチョコです。
Criollo(フランス)
Godiva(ベルギー)
クリオロやゴディバあたりが定番です。一般的な国産高級チョコの2倍程度の価格。小箱入りで4000〜5000円といったところです。
▶︎第2位
手作りチョコ〜本気度60%(メッセージ付き80%)
業務スーパーやドンキで調達したベーシックなチョコを湯煎で溶かして型に流し込み冷蔵庫で冷やして型から抜く…
100円ショップで調達した包装材でラッピングする女性が大半です(ボクの推察です😅)
▶︎第1位
完全手作りチョコ〜本気度99%(メッセージ付き100%)
本気度最強のチョコです。
前項の手作りチョコは、既存のチョコを溶かして再構成してラッピングを施した手抜き手作りチョコでした。
完全手作りチョコはカカオの栽培から始めます。カカオの苗が実をつけるまでに5年くらいかかります。
チョコレートの素になるのは「カカオの実」の種子である「カカオ豆」です。
苦節5年、カカオ豆が得られたならこれを発酵・乾燥させます。その後、ローストしてすりつぶしてペースト状にします。これが「カカオマス」です。この「カカオマス」を搾り「カカオバター」を得ます。この「カカオバター」がチョコレートの主原料になります。
チョコレートの完成までには、更に9つの工程を要します。
①カカオバターを小さく刻む
②50度のお湯で湯煎する
③完全に溶かしてカカオパウダーを加える
④砂糖を加える
⑤ミルクを投入する
⑥湯煎を止めて28度まで冷ます
⑦再度湯煎して30度まで昇温する
⑧30度を保ったまま型に流し込む
⑨冷蔵庫で冷やして型から取り出す
やっとチョコレートの完成です💦
更に、デコレーションしてラッピング。
手書きのメッセージを添えれば満点です!
みなと君の2月14日
2月14日、今年のバレンタインデーは水曜日。みなと君は仄かな期待を胸に登校しました。
でも、誰からもチョコは貰えませんでした。
帰宅して家族で夕食を済ませて、そのままダイニングでテレビを見ていると、2階から降りてきた妹が、
「これ、お母さんと私から」と言って二つのチョコを差し出しました。
誰からもチョコを貰えなかったみなと君を不憫に思った母と妹の心遣いです。でも、みなと君は余計に傷つくのでした。
夜の9時頃、小腹がすいたみなと君は24時間営業の近くのスーパーに出かけました。
お目当ては本日の特売品、「牛すじコロッケ」です。
惣菜コーナーを目指して店内を進んでいたみなと君がお菓子コーナーで目にしたものは…
かくして、みなと君は今年も2月を切ない想いで過ごすこととなりました。そして来年も…
「どんなに質素なチョコでも、たとえチョコが貰えなくても、気持ちが通じ合っていればあればそれでいいじゃない」なんて言明はお花畑にいる人の妄想です。
いつわりの愛
チョコを贈る側の女性にとってのバレンタインデーは、ホワイトデーに対する投資であり、その配当を期待するギャンブルと位置付けることができます。
オッズの低い(モテない)男子に大枚を投じて確実に配当を確保するなんて戦略もあります。
🎵人を愛するふりはつらいだけのもの そうまでかける 恋じゃない…
愛情の多寡は、往々にして円という通貨単位で測られるのです。
然し、チョコ問題の本質は別のところにあります。
バレンタインデーの闇
2023年のバレンタインチョコの市場規模は約468億円(経済効果は1000億円以上)です。
バレンタインデーに女性が男性にチョコを贈るという慣行は、国民がお菓子メーカーのマーケッティング戦略にうまく乗せられた悪しき風習です。
こんな稚拙な戦略が通用するなら、「7月10日7時10分に納豆(7・10 = なっ・とう)を食べるとどんな病気も完治する」なんて言い出す納豆メーカーが出てくるかもしれませんね。
また、各種ハラストメントに対する批判が年々高まっていますが、このチョコハラが、みなと君のような毎年深く傷つく少年を産出しています。
ということで…
来年からの2月14日は、チョコざいなバレンタインは無視して、バランタインでも飲んで楽しく騒ごう!