AI(人工知能)と将棋
将棋界ではAIの進歩は目ざましく、プロ棋士でもAIに勝てなくなりました。
そして、AIはこれからも進化を続け人間との棋力差は益々大きくなっていくことでしょう。
でも、人間の能力には論理的に解明できない神秘的なものがあるように思えます。
華麗な人間の知力
下図は簡単な詰将棋です。
このレベルの詰将棋であれば、将棋の初心者であっても、一目で正解をみつけるでしょう。
そうです。正解は5ニ金です。
「これは簡単な駒の配置だから当然だよ!」って思われるかもしれません。
でも、不思議です。
人間は、何十手もある初手の指し手からどのような思考手順で瞬時に正解を選択するのでしょう?
では、AIはこの詰将棋に対して、どのように対処するのでしょうか?
詰将棋はAIの最も得意とする分野です。
その解答に至る手順を推定してみました。
AIが正解を得るアルゴリズムを以下に記します。
私の推定する手順です。実際に使われているアルゴリズムとは異なっているかもしれませんが「しらみ潰し」に探索するという方針は間違ってないでしょう。
①AIは、まず盤上の動かせる駒を調べます。「5ニ歩成らず」と「5ニ歩成り」の2通りです。
②持ち駒を打つ指し手は、金を5一と5三以外に打つ79通りです。
AIは上記の81(2+79)通りの指し手全てを試します。
③81通りの初手に対して、その指し手が王手になっているか否かを調べます。
④王手になっていないものは除外します。そして王手になっている局面の王が詰んでいるかどうかを調べます。
この問題はここで正解の「5ニ金」に到達しますが、初手で詰みがない場合は、相手の応手の全てに対し次の可能な指し手を全て調べるということを詰みに到達するまで調べ続けます。
なんとも愚直な作業です。
でも最新のAIは2秒で1億手くらい読むそうです。
つまりAIは全ての指し手をしらみ潰しにコツコツと検証することによって正解を抽出しています。そして、その拙い手法を脅威的なスピードが支えているのです。
創造的な人間の知性
人間はせいぜい100kgの物体しか持ち上げることはできません。しかし、人間の創り出したクレーンは何十トンもの重量物を持ち上げることができます。
同様に、人間が創造した将棋を解析するAIの棋力が人間を凌駕することは自然な流れで仕方ないのかもしれません。
かように、AIよりも棋力が劣る人間ですが…
手順を超越した不可解な知性を垣間見るとき、人間はAIにはない「神秘的な閃き」を備えているように思えてしまいます。