東京から新幹線と在来線を乗り継いで、四国の地に降り立ちました。
どこからともなく春の空気が漂ってきます。
早咲き桜の蕾がほころび始めています。
淡く、そしてゆっくりとゆっくりと。
視線を水面に向けると…
緋鯉の左方には黒鯉が蝟集しています
濃密な湧水の川面でゆらゆらと尾鰭を閃めかしていた緋鯉は、近づくと、一瞬、頭と尻尾を弓のように反らすと水草の下に潜っていきました。
12月の日暮れ前だというのに気温は20℃。
ストラビンスキーの管弦楽曲「春の祭典」の躍動的な楽章が始まったかのようです。
ところが、2日後…
俄かに冬型の気圧配置が強まり、本格的な冬の到来です。
大気が突如澄明な硝子と化して肌を突き刺します。
私は、狂い咲きの桜に錯乱し、鯉に恋して、虚妄の春の兆しを過大評価していたのだろうか?
これぞ、まさしく「誇張の夢」…