接尾語「さん」の多様性
『だったら、医者、弁護士みたいに資格を取って… (中略)…ところが、お百姓さんや下町の職人さんなどは今までと同じような…』
この言説、テレビの教養番組で語られていました。
なぜ、百姓と職人には「さん」という接尾語を付加して、医者と弁護士には何もつけないのでしょう?
医者、弁護士、百姓、職人…
何れも職業を表す語で同階層の名詞です。
教養番組なら事務的に「百姓」、「職人」と言い放つのが順道です。
それを、過剰で不自然な気遣いをすることで、却って違和感を醸し出しています。
下世話な推測ですが…
「さん」は主に尊敬を表す接尾語ですが、それをあえて百姓と職人につけることで、
「私は、百姓や職人を見下していませんよ!」
と、弁明しているようです。
つまり、「さん」という接尾語を付加して、気安い雰囲気を創出し、職業の貴賎に対し無頓着であるように装っている…
穿ち過ぎかなぁ⁉︎
実態をまとめると…
実相 国語辞典
①尊敬の「さん」
役職名 などに付加して、尊敬の意を表す。
「お医者さん」「弁護士さん」
②丁寧の「さん」
体言に付加して、丁寧の意を表す。
「お世話さん」「ご苦労さん」
③親愛の「さん」
動物名などに付加して、親愛の意を表す。
「クマさん」「サザエさん」「お地蔵さん」
「部長さん」←おちょくりの意で用いる場合もある。
NEW ④弁明の「さん」
見下していないことを釈明するために付加する。
「お百姓さん」「職人さん」「お手伝いさん」
NEW ⑤特殊な「さん」
「営業さん」
これは親愛や弁明というよりも「揶揄のさん」の方が近い。
不真面目な営業マン(外勤時の喫茶店でのサボり、接待と称し経費でタダ酒)を皮肉った場面で使われる。
⚠️農業従事者、熟練技術を生業とする方々のように自らの能力で社会に貢献することは敬意に値します。