本稿は3月25日に投稿した「俳句解釈の多様性(この記事の「まとめ」の後にリンク)」の続編になります。
先の投稿では、『世界一短い詩歌である俳句は、その情報量の鮮少さが故に漠然性が大きくなり、鑑賞者が感知する句意の一意性が担保されないのではないか?』という疑問を提起しました。
そこで本稿では、ChatGPT(人工知能)に、私の詠んだ俳句の感想文をを書かせ、私の句意と比較することで、上記疑問を検証してみました。
ChatGPT: AI技術によって、人間のように自然な会話ができるAIチャットサービス。OpenAIが2022年11月に公開した「自動会話プログラム」
ChatGPTによる句評
▶︎私が詠んだ俳句です。
▶︎ChatGPTへの質問
「寒椿厚き葉の端の確かなり」という俳句の感想文を書いてください。
ChatGPTは、同じ質問に対し毎回違う回答をしました
▶︎ChatGPTの回答
この俳句は、冬の寒さに耐える寒椿の葉が、その厚みによって確かに風雪から守られている様子を表現しています。作者が表現したいのは、自然の中にある生命力とその強さ、そして寒椿が冬の厳しい自然環境にも耐えて生きていく力を称えることでしょう。
この俳句からは、自然界にある生命の不思議さや強さを感じることができます。人間が忘れがちな自然の中の生命の輝きを、俳句を通して改めて気づかされるような気がします。また、季節感を感じることができる俳句であり、季節の移ろいや自然の変化を感じることができます。
「寒椿厚き葉の端の確かなり」という俳句は、簡潔な言葉で自然の美しさや生命の力強さを表現しているため、深く印象に残ります。
一方、私の句意は…
寒椿 厚き葉の端の 確かなり
⚠️私自身が自画自賛の解説をしています。この趣意は、3月25日の投稿で述べています(この記事の「まとめ」の後にリンク)
静謐な空間と椿葉によって創られる鋭く明確な境界 、三味線のバチのように硬質な質感。
そこには実在を確たるものとして捉えた作者の決死の覚悟までもが宿っているようだ。
肉厚な椿の葉がもたらす赫奕たる実存を中七で葉の端(はのは)と軽妙に詠んだところに作者の非凡な才能と技巧が感じられる。
この句にある椿葉と空間との離散的な境界は、枕草子 の一節(※下記)にある山際と薄明とが創りだす淡い境界と対極にあるも、静と動、あるいは硬と軟 のように互いに補完的でもある。
詩歌に於ける境界の双璧とも称されよう。
濃密なリアリティを対象として鋭角に切り取り、対象が自己に与える感性をていねいに詠みとったところに作者の面目がある。
※ 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる…
まとめ
作者は椿葉が創成した判然たる境界に焦点を当てたうえで、寒椿の毅然とした存在感に感動しているに対し、ChatGPTは、厳しい冬の環境での椿葉の逞しい生命力を総括的に愛でています。
この見様の違いはあるものの、どちらも感心が寒椿の厳しい環境に対峙する逞しさに収束している点では合致しています。
総じて、ChatGPTの句評は作者の句意にかなり近いものであり、人工知能がここまで進化したことに驚かされます。
一方で、作者の句意との微妙な隔たりを甘受できないというのも俳句の繊麗さではないでしょうか。
▶︎検証結果の総括
『俳句解釈に完全な一意性はみられないものの、句の主意については一定の客観的解釈が存在するようだ』
▶︎3月25日の関連記事(俳句解釈の多様性 〜あなたも芭蕉になれる)
↓ ↓
🌀一句詠んでみた 〜あなたも芭蕉になれる - こに〜 の ざれごと
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(補遺)
ChatGPTへ再度同じ質問をすると、1回目と異なる回答を返してきました。ChatGPTのアルゴリズムには乱数を発生させるような作用が組み込まれているのだろうか?
2回目の質問と回答は以下の通り。
▶︎ChatGPTへの質問(2回目)
「寒椿厚き葉の端の確かなり」という俳句の感想文を書いてください。
▶︎ChatGPTの回答
「寒椿厚き葉の端の確かなり」という俳句は、冬に咲く椿の葉の厚さや、その端の堅固さを描いた句です。この句には、寒い冬にも生命力を持っている椿の姿が感じられます。椿の葉は通常、薄く柔らかいものが多いため、寒さには弱いとされています。しかし、この句では「厚き葉」と表現されており、その厚みによって寒さにも負けない強さが感じられます。また、「端の確かなり」という表現は、椿の葉の端がしっかりとした形を保っていることを示しており、その美しさや力強さを表現しています。この句を読むと、寒い冬でも自然界には生命力があることを感じます。また、生命力の強さや美しさを表現する言葉が使われているため、心を和ませる効果があるとも言えます。